佐々木善之介と村瀬悠希の話

知広に距離を起きたい気持ちを伝えたあと、二人は特に話さなかった。

その晩も、善之介はベッドを知広に譲り、ソファで寝た。

ここのところ毎晩ソファで寝ているからだろう。
あまり疲れがとれていないのを善之助は感じた。

「今晩…どうしようかなー…」

善之介は起き抜けから考えた。
距離を置こうと行ったものの同棲してるものだから、別には寝ていても、毎日知広と顔を合わせてしまう。

「…ホテル、泊まろうかな」

善之介は知広と、物理的な距離を置きたかった。

知広を嫌いになったわけでは、もちろんない。
かといって、この間までの無我夢中でひたむきと言えばいこえがいいが、傍若無人なまでの情熱はおさまったのかもしれない。
一瞬のうちに燃え上がった、暴力的、破壊的なまでに、知広を征服したい、独占したいという欲望の炎は燃え尽き、たまに燻ると、自己嫌悪と後悔変わって善之介の胸をチリチリ焦がして痛めた。

情熱が冷めてしまったと言えば冷めてしまったのかもしれない。
燃え上がる情熱は、やさしいぬくもりとなって、知広を思いやる余裕に変わったとも言える。

愛とは破滅的な情熱か
創造的な思いやりか

あるいは、自分本意と他者本意の狭間で、自己の境界を探し続ける、極めて人間的な感情を指すのかもしれない。

己の情熱をぶつけ続けるべきか。
それとも、知広の気持ちを優先させるべきか。
善之介は知広を前にすると、自分がどうしたいのか分からなくなり、混乱した。

さらに混乱することに、こうして距離を置くこと自体、自分勝手に知広を振り回していることに、善之介は気づいている。

今さら?

善之助は後悔していた。
知広を犯す前に気づくべきだった。

肉体が繋がれば繋がるほど、精神がバラバラと離れていく。
それは、ひとつになれない圧倒的な絶望感。
永遠の孤独。

善之介がいくら愛したとしても、知広はどう思っているのだろう?
オレとともぴょんはひとつになれるのだろうか?

ともぴょんはオレのこと好きになってくれないの?

知広の気持ちが分からず。
自分の気持ちも分からず。

善之介は途方にくれ、ただただ知広から離れて、冷静になる必要があると思った。

時計は朝8時を指している。
1限目のない知広は起きてこない。

善之介は少し大きめのボストンバッグに数日分の着替えを詰め、家を出た。
行く宛はない。
できるだけ知広と離れたい。

 

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