乾燥して埃っぽい教室は西陽が差し込んで、オレンジ色に染まっていた。
机や椅子の長い影ができている。
知広は教室の後ろで壁にもたれ、坂本の求めるがまま唇を許しながら、影が伸びていくのをぼんやりと眺めていた。
「…はぁ。」
唇を離すたび吐息が漏れる。
「…ともぴょん。」
坂本が熱を帯び潤んだ瞳で、知広を情熱的に見つめる。
知広がゆっくりと目線を坂本に移す。
「愛してる…愛してる…」
目線が合うのを待っていたかのように、坂本は知広を強く抱き締めた。
狂おしいほどの熱情が坂本を襲い、キュウンと胸を締め付ける。
「…好きだ!」
坂本の声はほとんど涙声で懇願するようだったが、情熱的な坂本の胸のなかで、知広は心が冷たくなっていくのを感じた。
坂本の情熱に反比例するように知広の頭は冷静で、目の前の坂本のことよりも、坂本が好きだと言っていた悠希の顔を思い浮かべていた。
かわいらしく微笑む悠希の顔が、悲しみに染まって暗くなる。
もしも坂本とセックスしたら、きっと悠希はオレを憎むだろうと思った。
「…ともぴょん。」
坂本は知広の髪を撫で、再び口づけした。
初めは軽く、そして貪るような激しいキス。
坂本の舌を受け入れながら、知広は善之助のキスを思い出していた。
善之助とのキスは、もっと甘くて、嫌でも一体にとろけるようなキスだった…
もう善之助とキスできなくなるのだろうか?
他の人とのキスで満足できるのだろうか?
「…やっ!!!」
急に坂本の舌のざらざらとした感触が強調され、異物のように感じられた。
知広は顔を背け、唇を離した。
坂本の顔に絶望の色が滲む。
「…あ…ごめん…オレ…」
知広が慌てて釈明しようとするのを、坂本が遮った。
「…やじゃない!!!」
坂本が知広の両腕を掴む。
知広は驚いて目を丸くした。
「やじゃねーんだよ!!!」
坂本が再び強引に知広の唇を奪う。
「…いやだ!!!!!」
知広は全力で坂本を突飛ばし、腕を掴む手を振りほどこうとした。
坂本は振りほどかれた手で、そのまま知広の胸ぐらを掴んで、教室の隅に追い詰める。
「…ちっ!!!」
坂本は舌打ちをして、隅に追い詰めた知広を上半身で羽交い締めにし、知広のズボンのなかをまさぐり始めた。
「こんなことならカラオケ屋でヤッときゃよかった…」
「い…やだっ!!!!!」
知広が両手でズボンのなかに入ろうとしてくる坂本の手の侵入を阻止する。
「…やだっつってんだろ!!!!!」
知広が言い放った矢先、坂本の右フックが知広の顔面に決まった。
目の前を火花が飛んで、一瞬真っ暗になる。
よろめいて壁にぶち当たる知広を上から押さえ込み、坂本は一気に知広のズボンとパンツを降ろし、自らのズボンのチャックを下げた。