次の日の放課後。
知広は誰ともしゃべらず図書館でレポートに取り組みながら、善之介が迎えに来るのを待っていた。
図書館二階の窓際の四人がけの席。
借りてきた本をパラパラ捲りながら、引用箇所をノートに書き写す。
「昨日の怖い彼氏は今日はいないの?」
おもむろに話しかけられ、知広はビクリとした。
隣を見上げると、昨日トイレでぶつかったサーファー風チャラ男が立っていた。
―公衆便所みたいに次から次へと…
昨日の今日で、知らない男としゃべってたら、善之介に怒られるかもしれない。
「ちょっと!ともぴょん!無視しないでよ。」
チャラ男が知広の隣に座ってきた。
「…なんでオレの名前知ってんの?」
「だって、彼氏、呼んでたじゃん。あの身勝手彼氏じゃセックス気持ちよくないでしょー?」
知広は隣の男を睨み付けた。
「だって、昨日トイレでわりとつらそうなあえぎ声あげてたじゃん。オレならさー…」
男が知広のズボンのなかに手を伸ばした。
「…ちょ!!!」
「しっ。ここ図書館だよ~静かにしないと。」
男は知広のぺニスをしごき始めた。
「図書館でチンコ硬くしてるとか、変態だね。」
男がニヤニヤしながら紅潮する知広の顔を眺めた。
知広の息が荒くなる。
「オレなら、ともぴょん、気持ちよすぎてトロトロにしてあげるけど。」
知広は男の手の動きに身を任せていた。
男の声が気持ちよく、右から左へ抜けていく。
知広の頭のなかが真っ白になる。
「ちなみに、これオレの連絡先。坂本っていうから。続きしたくなったら連絡してよ。」
「お前何やってんだよ!?」
次の瞬間、善之介が坂本の胸ぐらを掴んだ。
知広も余韻から覚め、我に返る。
「はぁ!?!?!?」
イケメン同士が掴み合いの喧嘩になって、図書館が騒然とした。
「騒ぐなら出ていきなさい!!!」
一階から上がってきた司書が一括する。
善之介が坂本の胸ぐらを突き放した。
坂本も舌打ちしながら、階段を降りていく。
一瞬緊張したものの、事なきを得て、図書館はまたいつも通り静かになった。
それぞれが人には関心なく、それぞれのするべきことに集中している。
「…ともぴょん、あの男に触られてイッたの?」
座っている知広の股間が濡れているのを、善之介は目敏く見つけた。
「あ…」
知広は目に涙をため、うつむいた。
肩が小刻みに震える。
「…ご、ごめん。」