「諦めないわけじゃないんだよ!?ストーカーじゃないんだから!!!すみませーん!焼酎2つと!!!あとウィスキー…ロックで!!!」
生ビールのジョッキを煽って、注文したぐらいから記憶は曖昧。
善之介が飲みに誘ってくれたもんだから、酔ったついでにさよ子にフラれた話を聞いてもらっていたのだ。
ちなみに、善之介とは学部は違うのだが、入学式で隣になってから、なにかと飲みに誘ってくれるし。
不慣れな上京生活。
さみしい時間を一緒に過ごして潰すことが多かったので、なんでも話し合える親友だと思っている。
さよ子のことも出会ったころからずっと相談していた。
「ともぴょーん、ちょっと飲みすぎじゃね?あんま飲めないでしょ???」
「大丈夫!大丈夫です!!!」
多分ビールのあと焼酎を飲んでからがよくなかったのだ。
女に振られて、飲めない酒を飲んで、くだまいてるうちに、大人になったような気がして。
焼酎飲んで頭が痛くなり始めていたのに調子にのって飲んだのがよくなかったんだと思う。
「諦めないわけじゃないから!ちゃんと距離はおく!!!さーよ子ちゃーんのことは忘れるようにする!!!」
「…うんうん。」
「忘れるよ!忘れるけども!!!
もし、さよ子が好きな男とうまくいかなかったら、そのときがチャンスだ!!!!!フラれて弱ってるところにやさしく手を差しのべる。そして、オレがさよ子と付き合えばいいんだから!!!」
「…うん。それ忘れてないけどね。」
「苦ーい…」
一杯目の焼酎を飲み干したころにはすでにヤバかったんだ。
「…だが、成長には苦味が必要だ!!!オレは今日一歩大人になった!!!…トイレ行ってくる。」
吐けばおさまるだろうと思って、一回吐いて。
「…おーい!ともぴょーん、大丈夫ー???」
戻って2杯目の焼酎を飲み、ウィスキーを飲んだあとは気持ち悪くて、トイレに座り込んでた。
「…て、ちょ!!!ともぴょん???」
頭はぐるんぐるんするし、脚には力が入らないし。
吐いたら吐いたで、なにか血みたいのが混ざってたような気がしたよ。
手はぶるぶる震えるし。
気は失ってないけど、これが急性アルコール中毒というやつなんだろうか???
「ともぴょん、水、水。」
オレは情けないことに善之介に介抱してもらい、担がれて、店を出た。
なんか、善之介の髪からはさよ子よりもいい匂いがするなと思いながら、そのあとの記憶はプツリプツリと途切れ途切れになっている。