「よろしくお願いします。」
さよ子の声が聞こえた。
思わず頭をあげるオレ。
さよ子が頭を下げていた。
「こ…こちらこそ!」
慌てて頭を下げなおすオレにさよ子が微笑んだ。
この後のことは覚えていない。
味とかよく分からないままテーブルの上の料理を片付け、しこたま飲んだ。
この前、善之介と飲んだときよりうまい酒だ。
焼酎とウィスキーには手を出さず、ひたすらビールだったのもよかったのかもしれない。
飲んで飲んで飲み続け、時間は12時をすぎようとしていた。
「…あ、終電、大丈夫?」
我ながら野暮なことを聞いたもんだ。
「私のうち、ここから近いんだ。」
さよ子が続ける。
「…今日は、このまま泊まっていく?」
さよ子の家に向かうまで、オレたちは黙って歩いた。
緊張で動機が早くなるのを感じていたし、この胸の高まりは、さよ子にも伝わっているだろうかと思った。
歩くオレの手を取り、さよ子が腕を絡めてくる。
彼女の柔らかな髪が知広の鼻先に触れ、甘い香りに目眩がしそうだ。
イケる!イケるぜ!イケるよ!!!オレ!!!!!
通りすがりのコンビニの前で、口を開く。
「ちょ、ちょっとコンビニに寄っていい?
か、金おろしてくるわ。」
さよ子はコクンとうなずいた。
コンビニに入ったオレは、ATMを店の奥に見つけ、ろくに確認もせずに、ボタンを急いで連打した。
降ろしたいのは金じゃねぇ!ズボンだ!!!
オレは心ここにあらずのまま、適当に金を引き出し、ついでと見せかけて、飲み物とコンドームを買ってコンビニを出た。