「…これ?坂本???」
知広は坂本主演のゲイビデオのパッケージと悠希の顔を交互に見た。
悠希が真っ赤になって恥ずかしそうにうつむく。
ラックをよく見ると一区画が全部坂本出演のゲイビデオになっていた。
「全部坂本?全部持ってんの?」
悠希はうつむいたまま黙ってうなずいた。
50本…下手すると100本ぐらいあるんじゃないだろうか。
てか、アイツどんだけゲイビ出演してんだよ!?!?!?
知広はその量を見て今さらながらに驚いた。
「…坂本が好きなの?」
「…うん。」
知広の問いに悠希は素直にうなずいた。
「だから僕、佐々木くんに相談してたんだ。キミと佐々木くんがセックスしてるの目撃して、どうやったらあんなにリアルに付き合えるんだろうと思って、うらやましくて。」
知広と悠希はテレビを適当に流し、ビール片手に、ソファに座り話し始めた。
「…善之助、なんて言ってた?」
「酒の勢いって言ってたかな…」
「…酒の勢いか。」
知広は苦笑した。
確かに酒の勢いはあったとは思う。ほぼ一方的に強姦されたけど、酒さえ飲んでなければ善之助はそんなこともしなかったかもしれない。
沈黙が続く。
考えてみれば、悠希と知広はほぼ初対面で話すことがほとんどなかった。
「…村瀬くんは坂本掘りたいの?」
長い沈黙に耐えきれず、知広は我ながらディープな話を振ってしまったと後悔した。
「えー。」
悠希も面食らったような顔をする。
「えっ!?あっ!?オレの場合はさー。アイツにわりと一方的に掘られたからさぁ!酒の勢いでよかったかもだけど!!!…その…掘られる側としては酒の勢いもなにもやる気になってもらわなきゃなんもできないから困るよねって話!!!!!」
…何言ってるんだ、オレ。
知広は独りで落ち込んだ。
落ち込む知広に追い討ちをかけるように悠希が尋ねる。
「そういうとき、ともぴょんはどうするの?」
「え…オレは…」
知広は手に持っていたビールをグビグビ飲んだ。
「オレは…基本ノンケだから、そういう気持ちにはならない…かな!」
知広は自分で自分を慰めたときのことを思い出した。
チンコしごいて、指を入れていたけれど物足りなくてもどかしくて、寂しい気持ちになる。
ああいうとき、どうすればいいのか、オレの方が教えてほしい。
「そっかー…」
悠希が心なしかガッカリする。
おもむろに立ち上がり、坂本のDVDをプレイヤーに入れた。
「キングはどっちかっていうとタチで…僕、見てるとドキドキするんだよね。」
DVDが始まる。
悠希が冒頭早送りした。
「これとか、女優がスゲー気持ちよさそうじゃん?トロトロになっててさ。」