春野知広と村瀬悠希の話

目覚めると日は高く昇り、時計の針は12時すぎを指していた。
カーテンを開けると眩しい光が部屋のなかを明るく照らし出す。

善之介はすでに出掛けたようだった。
ソファには夜寝るときに着ていたスウェットと毛布がかけられていた。

知広は、冷蔵庫から牛乳を取り出した。
トーストを焼き、テーブルの上のバナナを食べて空腹を満たす。

昨日はヘビーな一日だった。
知広は昨日からの出来事をぼんやり反芻していた。

夕方、善之介が美少年と一緒に帰るのを目撃。
坂本と飲みに行き、カラオケ屋でペッティングしてしまったこと。
善之介のLINEに気づき、朝5時に帰ってしばらく痴話ゲンカしたこと。

朝方寝たこともあり、なんのやる気も起きず、知広はだらだらとテーブルの上に突っ伏した。
坂本とヤりかけたのは悪いけれど、最後まではヤッてないし。
そもそも悪いのは、週末お泊まりして美少年と浮気してる善之介だと、知広は自己正当化する。

キッチンを見ながら、知広は流しで食器洗ってるときに後ろから善之介に求められたときのことを思い出していた。
ベッドや風呂場ではもちろん、ソファ、キッチン、果ては玄関でと至るところで善之介とセックスしたことを思い出す。

犬みたいだな…

知広は思った。

ヤッてないのはトイレぐらいかと思いかけ、トイレでは視られながら用を足していたことを思い出し、極度に恥ずかしくなり、独り赤面した。

この家にいると善之介とのセックスばかり思い出してしまう…

知広は頭を振って、リフレッシュしようとした。

「シャワー浴びて、学校行こう。」

知広は午後からの授業に向かった。

とりあえず授業には出席したものの、講義の内容は右から左へと気持ちよく筒抜けになっていった。
頭には靄がかかったようにボンヤリして、外界の情報が不明瞭に感じられた。
知広の頭のなかは自分のことを考えることで精一杯で、無意識が情報を遮断していたようでもあった。

「昨日大丈夫だった?」

LINEの通知画面が表示された。
坂本からのLINEだった。

頭のなかの靄が晴れ、知広の頭脳が明瞭に働き出す。

昨日は全然大丈夫じゃなかったし!
善之介のことを全部相談できるのは、知広には坂本しかいない。

会いたい!
会ってすべてを話したい!!!

知広は坂本に頼りたい衝動に駆られた。

坂本の気持ちは知広は分かっていた。
次に会ったときには、もしかしたらセックスすることになるかもしれない。

それでも知広は坂本にしか頼ることができなかった。

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