確かにオレは引っ越すことを決心したんだけど。
アパートの部屋のオレの荷物がない。
ない!
ない!
キレイさっぱりない!!!
脱ぎっぱなしで置いてた服も!
敷きっぱなしの布団も!
読まずに積んどくだけの本も!
どこへ!?!?!?
「とーもぴょん♪」
久しぶりに聞いた声に振り向きざま、パシャリ!
写真を撮られる音がした。
「驚いた顔もかわいいねぇ。」
そこには善之介が立っていた。
「林家ぺーか!?」とツッコむ間もなく、善之介が言った。
「部屋の荷物、全部処分したよ」
「しょ…処分?」
「そー、処分したよ、全部。」
善之介がオレの肩を抱き寄せ、続ける。
「ともぴょん、ボロアパートで壁が薄すぎて嫌がってたじゃーん。
うちに来なよ。」
「はぁ!?」
たじろぐオレの肩を掴んで、善之介がスマホのカメラスクロールを見せる。
「ともぴょんの写真いっぱいあるからなー」
善之介のスマホのなかには、オレ、オレ、オレ、オレ、オレ…
「特にこないだのともぴょん、かわいかったから、いっぱい撮っちゃった。」
そこには下半身が精子にまみれた、全裸のオレの写真が大量にあった。
「…こ、れは…?」
善之介がニヤニヤしながら涙目のオレを見る。
「動画は余裕なかったから撮れなかったのが残念なんだけどね。
うちに来なよー。来るよね?」
喉がカラカラに干上がるのを感じる。
オレは声も出せずに、ただうなずくしかなかった。