昨日のことは覚えていない。
春野知広は思った。
例え覚えていたとしても、覚えてない。
昨日は、さよ子にコクって、フラれて、善之介と酒飲んで
泥酔して、家まで送ってもらって、それから…
それから…?
「ケツいて。」
起きたら昼の12時をすぎていた。
あまり気分じゃなかったけれども、二日酔いには食べるのが一番だから。
多分昨日の夜善之介が買ってきてくれたのであろう、パンを食べた。
パンの横にはソルマックが置いてあった。
それも飲んだら少し気分がすっきりしたような気がする。
「シャワーでも浴びるかー」
服を脱ぎ、シャワーを浴びる。
ぼんやりしていた頭が働き出して、感覚が甦る。
さよ子にコクってフラれたことなんか遥か遠い昔のことで
泥酔して、善之介に送ってもらったことが昨日のこと
それから、何回もキスした上に、舌まで入れられたこととか
下半身をいじり回されて、舐められて、イッてしまったこととか
ケツに指入れられたこととか
指ってゆーか、ちんこ入れられたこととか
…ついさっきのことのように思い出されるのだけども。
「覚えてない」で押し通す予定。
知広はすでに心に決めていた。
過去のことは過去のこと。
自分の記憶のなかのことなら、忘れたことにしよう。
女に振られて、男に掘られたとか!
黒歴史すぎて、闇に葬り去る以外にどうすればいいのか、分からないというのもある。
過去のことよりも問題は未来のことで。
明日以降、さよ子とはゼミで会うし
距離は置くつもりでも、善之介だって会うことになるかもしれない。
そのときどんな顔して会えばいいんだろうかと考えて、知広はなかったことにしようと思ったのだった。