村瀬悠希の話

知広は善之介にLINEを送った。

「善之介どうしたの?大丈夫?」

「うん。」

「今どこにいる?」

メッセージは既読になったものの、そこから返事は特になかった。
電話もかけたが出てくれなかった。

なにか事故でも起こしたかとも思ったが、家にも特に連絡はなく、「大丈夫だ」と本人は言ってるし、無事ではいるのだなと知広は思った。

週末、無駄に広いキングサイズのベッドの上で、知広は独りゴロゴロしながら考えた。

善之介はなにをしてるんだろうか。
女のところで油を売ってるんだろうか。

それとも浮気?
別に好きな男でもできたのなら、オレは捨てられるんだろうか。

ケツを掘られるだけ掘られて、さっさと捨てられるのか…

少し惨めな気持ちにはなったが、別にオレ女じゃないし。

黙って学校卒業して。
就職して、結婚して、子供つくって、田舎に家を建てて、慎ましくも幸せに暮らせばいいじゃない?

知広は思った。

ちょっと男と寝た経験をしてしまったけども、人生はまだまだ長い。
男の高級マンションでだらだら子孫も残せないセックスを無駄にし続けるよりは、いいはずなのである。

女でも男でもこの際、どっちでもいい。
このまま善之介は別のヤツと付き合って、別れられればいいじゃない。

オレのプライドはちょっと…というか、かなり傷ついたけど、それはそれで、その分、強くなれたかもしれない。

脱出だ!!!
人生の黒歴史から脱出!!!!!

「脱出!!!!!!!」

知広は独り叫んでベッドから起き上がった。
だだっ広い部屋はしんと静まり返っている。

ベッドの周りの写真立てには知広とのセックス写真が飾られていて、なんとも趣味が悪い。

「善之介…」

行くあてもなく、その場で踞り、ボロボロ泣いた。

「好き放題ヤるだけヤッて、ヤり捨てなんて酷いよ。」

知広は呟いた。

「オレの気持ちはどうなるんだよ?」

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