繭の中

ベッドの脚から鎖に繋がれてるんだ。
ベッドの脇にはポリバケツが置かれていて、善之介の留守中はそこで用を足す。

オレは裸に白いバスローブを着て、学校へ行く気力もなく、日がな一日、ただ寝ていた。

ただ寝ているだけでも、腹減る。
昼飯はテーブルの上に用意されていて、腹が減ったら食べた。

夕方になると善之介が帰って来て、ただいまのキスをする。
しばらくすると夕食。

それから夜の散歩に連れていってもらい、帰ってきたら、風呂に入って、セックスして寝た。

家でご主人さまを待っている犬の気分だ。
日当たりのよいベッドで日光浴していると植物にでもなった気分になる。

一日一日がただぼんやりと過ぎていく。
常に眠くて、気だるい意識のなか、セックスの刺激にだけは敏感で、反応する身体に生きてるんだと実感する。

死んでもいいんじゃね?

ふと思うけれども、自殺を計る気力もない。
子孫も残せない快楽のためだけのセックスをするだけ。

オレが死んだら両親が悲しむだろうなと思った。

さすがに親より早く死ぬのは親不孝だろう。
さらに、息子がホモだったと知ったらどう思うだろうか。

セックスしかすることがない今、オレができることはなんだろうか。

今がほぼ死んでるようなものとして。
ほんの一歩でいいから、将来のためにできることはなんだろうか。

「とりあえず、学校卒業しよう。」

ベッドの上で、オレは呟いた。

日曜日の午後、オレは善之介に髪を切ってもらっていた。
特に話すことはないけれども、善之介が髪を撫でてくれるのが心地よかった。

「…学校行かせてよ。」

善之介の手が止まる。

「そろそろ学校行かないと単位落とすし。」

善之介は頭をひと撫でし、また髪を切り出した。
沈黙が続く。

「…てかさ、学校辞めちゃえばいいじゃん。」

善之介が口を開いた。

「このまま家にいればいい。」

そう来たか。

オレの心は不思議なことに冷静だった。
善之介がどんな突飛なことを言っても受け入れられるぐらい耐性がついたのかもしれない。

「…学校に行きたいよ。」

オレはもう一度言った。

「絶対戻ってくるからさ、昼間は学校行かせてよ。
心配ならGPS着けてもいいし、善之介の好きにしていいから。」

善之介の手が止まる。

「…絶対どこにも行かない?」

善之介の声は震えていた。

「行かない。」

オレは善之介をじっと見つめて言った。
そんなオレを善之介がぎゅっと抱き締める。

善之介は震えていた。
オレは、不安なのだと思った。

オレを失うのがそんなに怖いんだろうか―

大切に大切に大切に思いすぎて、壊す。

そういう愛情なのかなと思った。

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