A King’s Suffering

坂本球太郎(さかもときゅうたろう)―通称キング。

ゴールデンレトリバーを思わせる、整った顔立ちと、程よく日に焼けた引き締まった肉体が美しい。

そしてなにより、彼が「キング」と呼ばれる由縁は、その巨根っぷりと勃起する勢いによるものだ。
程よく長く太いそれが直下立つ様は、まさに「王者の風格」を思わせるものであり、艶かしく、そして、雄々しく腰を振る姿。
そして、勢いよく射精。
果てては、すぐに復活し、腹につくほど勢いよく反り返る姿は、まさに「キング」であった。

その日も坂本は、朝目覚めるといつものようにジョギング。
いつものようにシャワーを浴び、いつものように朝食を食べ、2限目から始まる大学の授業を受け、いつものように電車に乗って撮影に向かった。

いつものようにネコ役の男性と軽い会話。
いつものように軽くキス。
いつものようにディープキス。
いつものように乳首を弄る。
いつものように相手の男根を手コキで抜く。
いつものようにフェラチオをしてもらう。

すべてがいつも通りだったのに、ただ一つ、その日はいつも異なり、坂本は勃たなかった。

今日の相手の男優はアルバイトでやって来た大学生だった。
フェラチオは初めてなのかもしれない。
チロチロとぎこちなく、しかし、一生懸命舌を這わせる。

坂本も自分の肉体に起こっている異変に気づいて焦っていた。

「…た…勃たねぇ。」

焦れば焦るほど今しているセックスに集中できず、坂本は萎えていくのを感じた。

「今セックスしているのが、ともぴょんだと思えば勃つかもしれない。」

坂本は、今セックスしている本名も知らない目の前の彼に失礼であるとは感じながらも、知広を思い出した。

「…あ………。」

坂本は瞳を閉じ、顎をあげ、ごく小さく吐息を漏らした。
フェラチオの舌使いに合わせながら腰を動かす。

「…あ……はぁ………気持ちいい。」

坂本はいつも通り勃起した男根を突き立てようと、相手を立たせベッドに押し倒した。
相手と目が合う。
彼は男性とのセックスが初めてなのか、微かに震えているような気がした。

―仕事だから。
いつもなら坂本はそんなことも気にせず、セックスを続けた。

ただ、今日の。
いや、今日からの坂本はいつもと違う。

「…ともぴょん………じゃない。」

一度盛り上がった坂本の気持ちだったが、相手の男優が初めてであること。
そして、そんなことは当然分かっていたことだったが、改めて、目を合わせている彼が、知広ではないことに落胆した。

気持ちが萎えるのと共に、勃起したソレも萎え始める。

「…ご、ごめん。」

坂本は押し倒した男優から身を引いた。

「今日のオレ、なんか変だわ。」

監督のほうに向き直る。

「…すみません。オレ、今日はできません。」

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