イヴ・ド・パラディより愛を込めて

2019.10.11作成 

パリへ

(2019.10.11更新)

私は今、サバティエの港に降り立つ。 ――我が祖国!プランセールよ!!! 私はプランセールの大地に足を踏みしめ、プランセールの空気をこれでもかと言うほど胸いっぱいに吸い込んだ。 海鳥が私の到着を待ちわびていたかのように、高 […]

2019.10.10作成 

華麗なる復讐

(2019.10.10更新)

陽光が溢れ、鳥は囀《さえ》ずり、花が咲き乱れる。周囲に集まったありとあらゆる動物たちが無言のまま祝福してくれている……そんな幸せな楽園に住む住人は自分たち二人だけだと言わんばかりだ。幸せ一杯なのだろう。朝陽が昇る中での素 […]

2019.10.9作成 

結ばれる運命

(2019.10.9更新)

ビニスティ氏とサラの告白を受けた後、私たちはそれぞれ別室でデュムーリエ警部とフィデール刑事に一応の事情聴取を受けた。それはほとんど簡易的であり形式的なものだった。 この個別の事情聴取も終え、アーネストと私が捜査本部になっ […]

2019.10.8作成 

隠された動機

(2019.10.8更新)

「……ビニスティさまが、イヴさまの……イヴさまの想い人でしたか」 ビニスティ氏の告白を無言で聞いていたサラは、元々は細い目を大きく見開いて、普段は真一文字に結んでいる口を半開きにし、驚いた様子でビニスティ氏の顔を見詰めて […]

2019.10.7作成 

第1の犯行計画

(2019.10.7更新)

「バートラムさん、先ほど貴方は、ビニスティ氏が『第一の犯行を失敗した』と仰いましたが、アーサーさんの殺害が目的じゃなかったんでしょうか?アーサーさんの殺害自体は達成できてますよね?……それでも失敗ですか?」 メモを取るの […]

2019.10.6作成 

第2の犯行計画

(2019.10.6更新)

我ながら珍しくパッチリと目を覚ました。こんなにスムーズに瞼が開くことはまずない。余程ぐっすり眠ったのか、頭がスッキリとして爽快だ。 目覚めて初めて目にしたのは、私を上から見下ろすアーネストの顔だった。丸顔にいつも通りの虚 […]

2019.10.5作成 

グッド・ナイト

(2019.10.5更新)

残された私たち三人は、アーネストが去った後も暫《しばら》くは、なおも重苦しい空気の中、沈黙し続けた。アダムス男爵は頭を抱えたまま。ビニスティ氏はウィスキーを片手にグラスを回しながら斜《はす》に座って床をじっと見詰めている […]

2019.10.4作成 

最後の晩餐

(2019.10.4更新)

908号室――アダムス男爵の部屋の前には19時に集合予定だったが、ビニスティ氏を待たせるわけにはいかないので、私たちは18時45分には着いていた。 「やあ」 廊下の向こうからビニスティ氏とその執事ポールが歩いてくるのが見 […]

2019.10.3作成 

カフェ・ノワゼットを飲みながら

(2019.10.3更新)

「……いやぁ、女は怖い」 コーヒーを淹れながら呟く私の後ろでアーネストはソファに座り、黙りこくってなにか思案しているようだった。両手を組んで人差し指、中指、薬指とそれぞれ左右交互にくるくる回して遊んでいる。 「お前、よく […]

2019.10.2作成 

黒い噂

(2019.10.2更新)

この船の乗客たちは各々自室待機を命じられているものだと思っていたが、喫煙室にはちらほらと煙草を吸う紳士たちが集まってきていて、 立ったままの者やソファに腰掛ける者など銘々好きな格好で煙草をふかしていた。 ゆらゆらと揺れる […]

2019.10.1作成 

アダムは、いない

(2019.10.1更新)

「……質問遮ってごめん」 アダムス家の女性陣が食堂から立ち去っていく背中を見送って、私は隣に立っているアーネストに一言謝った。 「……いや」 彼は特に気にした風もなく口のなかで呟いた。私の方に向けることもなく、そのぼんや […]

2019.9.29作成 

禁断の果実を齧る女たち

(2019.9.29更新)

今夜からのアダムス男爵警護計画会議を兼ねたビニスティ氏との昼食を終えて自室へ戻る途中、アーネストが煙草が吸いたいと言うので喫煙室に寄るついでに、せっかく自由に動き回れる機会だから、私たちは食堂や図書館などを回れるところを […]

2019.9.28作成 

テロリスト、再び

(2019.9.28更新)

いい気分でお腹を満たした私は、鼻唄を歌いながら部屋に入り、アーネストに断りもなく我が物のようにベッドに身体を投げ出し、気持ちよく大の字になった。最高に幸せだ。 アーネストはアーネストで、ベッドを勝手に占拠している私の方は […]

2019.9.27作成 

海運王と、夕食を

(2019.9.27更新)

私たちを含め、被害者アーサー・アダムスの関係者たちが、夕食を取りに各々の部屋に帰るべく席を立ち、引き上げ始めたその時だった。 「君たち、もしよかったら食事に付き合ってくれんかね?」 男性にしては高めのよく通る大きな声が、 […]

2019.9.26作成 

死体に纏わる人物たち

(2019.9.26更新)

食堂に入るとまず目に入るのは、中央にある大階段であり、降りてすぐ目の前の大きな窓は甲板へと続いている。 その奥の壁には、4メートル四方はあるであろう。天井まで届く高さの、大きな絵画が掛かかっていた。 絵に描かれているのは […]

2019.9.25作成 

謎解きの始まり

(2019.9.25更新)

「ダイナマイトがあるって、なんで分かったんだ?」 デュムーリエ警部たちを部屋から送り出した後、私は扉を閉めながら、アーネストに話しかけた。 「……」 アーネストは、左手で頬杖をつき脚を組んで、ソファに深く凭《もた》れてい […]

2019.9.24作成 

事情聴取

(2019.9.24更新)

アーネストは、自分には少し大きめのズボンを貸してくれたようだが、背が彼よりも5センチばかり高く筋肉質な体型をしている私には少しきつい。股回りがパンパンに張っているのと丈が若干短いのが気にはなったが、まあ、なんとか入ること […]

2019.9.23作成 

その男、変人につき

(2019.9.23更新)

濃い紫色の空には大きな星がひとつキラキラと瞬いている。瞬く星の横にはうっすらと細く青白い月が弧を描いていた。 三月とはいえ未明の空の下、空気は冷たく、潮風が頬を濡らす。船酔いでのぼせ上がってぼんやりした私の頭を冷やすのに […]

2019.7.8作成 

密航したら死体を見つけた

(2019.7.8更新)

東は漢土から西は新大陸に至るまで、地球上至るところに植民地を持ち、「太陽の沈まぬ国」と呼ばれているイェゴス帝国本国はコンティネンス大陸北西に位置する小さな島国である。 イェゴス南部の港町、バドゥーはその「白い岸壁」で有名 […]

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