「…撮影ってなんの撮影?」
黒塗りの車を見送りながら、善之介が口を開く。
悠希は黙って俯いた。
「………」
俯く悠希を、怒ったようにしかめっ面をして善之介が見つめる。
「ふっ…」
それを見て坂本が鼻で笑う。
「…お前に関係なくない?つか、この子、アンタの新しい彼氏なの?そしたら別だけど。」
善之介が坂本を睨み付けた。
気にせず、むしろ挑発的に、坂本は続けた。
「…彼氏なら助けてやれよ。金ないらしいから。…てかさ。」
坂本がため息をつく。
「ともぴょん毎日泣いてんし、こいつはゲイビに出るっていうし、アンタ、何やってんの?」
「…ゲイビ!?!?!?」
善之介は驚いて目を見開き、悠希を見た。
「…ちょ!!!」
悠希が坂本をおさえる。
「村瀬!ゲイビってなんだよ!?」
善之介が悠希の肩を掴んで自分の方に振り向かせようとする。
「ゲイビ出るほど金に困ってるなら、オレが…」
「…ちょっ!離して!!!…関係…関係ないでしょ!?!?!?」
力づくで振り向かせようとする善之介を振り払いながら、悠希が叫ぶ。
思いの外強い力で抵抗する悠希に、善之助は一瞬怯んだ。
関係ないと強く言われたことがショックでもある。
「お…お金は困ってない!…僕…僕、ただキングについて行きたかったんだ。」
善之介の手を振りほどき、悠希は坂本に駆け寄って、言い放った。
「…僕、キングと一緒にいたいから。」
坂本も驚いて悠希の顔をまじまじと見た。
見つめる坂本をまっすぐに悠希は見ている。
「僕、キングが好きなんだ。」
悠希は続けた。
「君と一緒にいられるなら、僕はなんだってする。」
唐突だが、真剣で力強い告白にいたたまれななくなって、善之介は踵を返した。
「佐々木くん!」
去ろうとする善之介に悠希が声をかける。
「…ともぴょん、…大事にしてあげてよ。」
好きになりかけていた悠希の言葉が重くのしかかる。
悲壮感と罪悪感が入り交じるつらい気持ちが押し寄せ、腹がしくしく痛む。
善之介は振り返りもせず、その場を後にし、ホテルに向かった。