King and Prince, vs…

学食を出てから、村瀬悠希の胸はざわつき続けていた。
佐々木善之介の前では平静を装い去ってきたものの、出席した授業中はずっと上の空だった。

佐々木くんとともぴょんが距離を置く。

それは自分のせいでもあるのだろうかと悠希は良心の呵責に苛まれた。

ともぴょんは大丈夫だろうか?

ただ心配していても埒があかないことは分かっていた。
本人に聞いていいものか思い悩んだし、会えるかどうかは分からなかったが、居てもたってもいられず、授業が終わったあと、悠希は、知広が勉強する校舎へと向かった。

法学部の校舎に着いた頃にはあたりは暗くなっていた。
校門を入り校舎へと向かう道すがら、人影が見える。

髪型や体型から、それは坂本だと悠希には一目で分かった。

キングだと分かり歩を止める悠希の横を、知ってか知らずか、坂本は通りすぎようとした。

「…ねぇ!…キ…坂本くん!!!」

悠希は思いきって坂本を呼び止めた。
心臓が飛び出すかと思うぐらい、バクバクと鼓動する。

「春野く…ともぴょん、知らない?」

坂本が脚を止め、悠希を横目に睨んだ。

「知らない。」

知ってても知らない。
坂本は嘘をついた。

自分の思い通りにならない知広にも腹が立つが、なにより、そんな知広を無理矢理襲おうとした自分にひどく腹が立っていた。
今は知広の名前を聞くだけで、腸が煮えくり返る気持ちになった。

「…あの。待って!坂本くん。」

不機嫌になってさっさと去ろうとする坂本を悠希が呼び止める。

「なに?まだなんか用?」

「…あの、僕…僕ね、ゲイビに出たいんだけど。」

「はぁ?」

悠希も咄嗟に嘘をついた。
本当に憧れているキングに緊張して話しかけられたついでに、もう少し話したくて、自分でも思っていもなかった突拍子もない嘘だった。
もちろん後先どうなるか考えられてもいない。

「…あ、あの、ぼ、僕、お金なくて困ってるんだ…」

緊張して顔が真っ赤になっているのが、自分でも分かる。
挙動不審になっているし、二回話しただけでおかしな話をしているのも、理解していたが、どうにもこうにも止めることができなかった。

立ち去ろうとしていた坂本は向き直り、悠希の顔をじっと見つめた。
顔から体、足元までまじまじと見回す。

「金がいるならボーイでもやりゃいいんじゃないの?見た目悪くないし、そっちのが稼げるかもよ?」

「まままま、待って!!!」

アドバイスを残し、右手を振って立ち去ろうとする坂本の腕を悠希は掴んだ。
ついつい掴んでしまった憧れの人の、無駄のない筋肉に驚いて、パッと手を離す。

「だから、なんだよ!?」

「…しょ、紹介してくれない?」

坂本が眉をひそめながら、悠希に顔を近づけた。

「性器丸出しのデータ残るけど、後悔しない?」

悠希は一瞬戸惑ったが、こくんと頷いた。
このまま坂本と一緒にいられるなら、どうなってもいいと思った。

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