Painful Rainy Days

善之介は右肩にしなだれかかる知広に腕枕しながら、快楽の余韻に浸っていた。
知広の右頬を撫でる。
知広は構わず虚空をぼんやり眺めていた。

今夜の知広は心ここにあらずだと善之介は思っていた。
知広の瞳の置くには、自分がいないことを感じた。

いつもならその日あった出来事をポツリポツリと寝物語に知広は話す。
セックスの前のキスの時も、瞳を逸らし、一瞬拒むように身をよじらせたものだから、善之介はいつもよりも強引に、知広の感じる箇所を愛撫した。

「ともぴょん、今日、なんかあったの?」

知広の左耳に唇をつけ、善之介は囁いた。
知広は首を横に振り、布団のなかに潜り込もうとして、善之介のほうを見た。

善之介の心配そうな歪んだ顔に、昼間の坂本の歪んだ表情がオーバーラップする。
ズキリと胸が痛む。

どちらかひとりを選ぶから、もう片方を傷つけることになるのだろうか。
だからといって、どちらも選んでは両方を傷つけることになるだろう。

恋愛は難しいと、知広は生意気にも思っていた。
他人の気持ちを思えば思うほど、それはお互いを傷つける結果にになるのかもしれない。
結局のところ、自分本位であることが最良の選択なのだろうかと思う。

「…なんでもないよ。」

知広は上半身を起こして善之介の唇に軽くキスをした。

「…なんでもない。」

再びキスしようとする知広を、善之介が制止する。

「…なんでもないこと、ないでしょ?」

善之介は、知広の大きな茶色い瞳のなかに自分が映っているのを、じっと見つめた。
泣きそうな知広の左の頬をそっと撫でる。

知広はたまらずポロリと涙を溢した。

「…いや、オレが泣くこっちゃないんだよ!オレじゃないんだよ、きっと泣きたいのは!!!」

涙は、拭っても拭っても止めどなく溢れてきた。
善之介も身を起こし、よく分からないまま涙する知広を抱き寄せた。

落ち着きを取り戻しながら、知広は今日の出来事を語り始めた。

坂本と会ったこと。
坂本と悠希の関係に口出ししたこと。
坂本を悲しませてしまったこと。

善之介は、知広を抱き締めたまま、知広が話し終えるまで黙って聞いていた。

「…ともぴょんは、坂本が、好きなの?」

知広は頭を振った。

「…好きじゃないけど。。。というか、友だちとしては好きだから。」

知広は善之介の胸に顔を埋め、心臓の鼓動を聞きながら答えた。

「幸せになってほしいと思うんだ。」

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