Sleeping Beauty

「………あっ!……………あっ!…あっ!あっ!あぁ!坂本………」

オレは夢を見ながら、きっとこれは夢だと分かっていた。

オレは知広を好き放題に犯したあと、腕組をして枕元に座っていると、仰向きに寝た知広が静かな声で
「もう死ぬね。」
と言った。

オレは、知広のさらさらとした前髪を撫でた。

真っ白な頬の底に温かい血の色が程よく差して、唇の色は無論赤い。
到底死にそうには見えない。
しかし知広は静かな声で、
「もう死ぬね。」
とはっきり言った。

オレも確かにこれは死ぬなと思った。

そこで、
「そうなの?ともぴょん、もう死ぬの?」
オレは上から覗き込むようにして聞いてみた。

「死ぬよ。」
と言いながら、知広はぱっちりと眼を開けた。
大きな潤いのある眼で、長い睫毛に包まれた中は、微かに茶色く透き通っている。その瞳の奥に、オレの姿が鮮やかに浮かんでいる。

オレは深く透き通るやや赤みがかった彼の瞳の色沢(つや)を眺めて、これでも死ぬのかと思った。
それで、ねんごろに枕の傍に口を付けて、
「死なないでしょ?大丈夫でしょ?」
とまた聞き返した。

すると知広は茶色い眼を眠そうに見張ったまま、やっぱり静かな声で、
「でも、死ぬんだ。仕方ないよ。」
と言った。

「じゃあ、オレの顔が見える?」
と一心に聞くと、
「見える?って。そら、そこに映ってるじゃん。」
と、にこりと笑って見せた。

オレは黙って、顔を枕から離した。腕組をしながら、どうしても死ぬのかなと思った。

しばらくして、知広がまたこう言った。

「死んだら、埋めてね。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちてくる星の欠片を墓標において。そうして墓の傍で待っててよ。又逢いに来るから。」

オレは、何時(いつ)逢いに来るのかと聞いた。

「日が出るだろ?それから日が沈むだろ?それから又出るだろ?そして又沈むだろ?―――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちていくうちに、―――お前、待ってられる?」

オレは黙って頷いた。知広は静かな調子を一段張り上げて、
「百年待っててよ。」
と思い切った声で言った。
「百年、オレの墓の傍に座って待っててよ。きっと逢いに来るよ。」

オレはただ待っていると答えた。すると、茶色の瞳のなかに鮮やかに見えたオレの姿が、ぼうっと崩れて来た。静かな水が動いている影を乱した様に、流れ出したと思ったら、知広の目がぱちりと閉じた。長い睫毛の間から涙が頬へ垂れた。―――もう死んでいた。

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