Weekend, the End

その日、本郷武人は撮影の打ち上げで朝まで飲んでいた。

東の空は白んでいた。
薄紫の空を、真っ黒なカラスがカァカァと飛んでいく。
宵の澄んだ空気が酒で少し蒸気した頬を刺し、酔いを少し冷ました。
夜通し遊んだ外国人や若者たちが、六本木通りに向かってゾンビのようにふらふらと歩く。

三叉路にある昭和の遺物のような年代物のラブホテルの前を折れて右へ向かおうとした、その時だった。
見覚えのある背の高い男が、少し背の低いパーマネントがかった髪の美少年を連れて出てきた。

「…キング!」

後ろから話しかけられたからなのか、情事のあとに、思いがけず聞き覚えのある声で話しかけられたからなのか、坂本がギクリと肩をすくめた。

美少年が先に振り向いた。
こんな上玉の「女優」はなかなかいないから、数週間前、撮影前に坂本が喧嘩沙汰を起こして中止になった撮影のネコ役だなと、本郷はすぐに思い出した。

「お前らデキてたのか?」

本郷が徹夜明けとは思えないしっかりした声で尋ねる。

「…本郷さん。偶然だね~。」

坂本は困ったような顔をした。

「さすがキング!うまいことやったなぁ~。」

本郷が坂本の尻を叩く。
坂本は避けながら苦笑いを浮かべた。

「この前の撮影の時はインポで悩んでたのに、キング復活か~?」

これには悠希も苦笑するより他なかった。

「失恋したとか言ってやがったのに、か~!!!」

本郷が坂本の肩をバンバン叩く。

「美少年抱くために、俺のこと袖にしたんか!」

本郷は悠希の目をじっと見つめた。

「いや、そんなことはないんだけどさっ!」

坂本が焦って否定するのは、実際のところを何も知らない本郷には照れ隠しのようにしか見えなかった。

「アンタ、キングの彼氏なの?」

本郷が真っ黒な瞳で、なお、悠希の目を見つめた。

「…いや………僕は、ただ今日ヤっただけっていうか………」

悠希が話しにくそうにもごもごと呟く。
坂本は目を伏せた。
本郷は悠希の顔を真っ直ぐに見ている。

「…多分、セフレみたいなもんです。ただの。」

悠希は俯いた。
坂本に自分への愛情がないことを自ら言葉にしてしまったことで、悠希は俯いた果てしない悲しみに襲われた。

「…セフレ、ねぇ。」

本郷は繰り返しながら、なおも射抜くように悠希を見つめ続ける。
それは挑戦的な眼差しでもあり、黒い真っ直ぐな瞳の奥には、嫉妬の炎が爛々と燻っていた。

―――この男がいる限り、キングはオレのものにならないのだ。

本郷は認識した。

―――この男は敵だ。

「ま、あんまやり過ぎて撮影とばすなよ。」

嫉妬と憎悪の気持ちを押し殺して、本郷はにこやかに言った。

―――潰す。

本郷は心に決めた。

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