「じゃあな。」
善之介がさよ子に声をかけたとき、さよ子は風呂場でガタガタ震えていた。
「ともぴょんもなんか言ったら?」
さよ子が顔をあげた。
「…じゃあ…ね…」
さよ子はなにか言いたげだったが、オレはさっさと踵を返した。
恥ずかしいのもある。
怒鳴り散らしてしまいそうで。
泣いてしまいそうで。
さよ子の顔はもうまともに見られない。
オレは行き先も考えずに、善之介のうしろを歩いた。
近くのコインパーキングには善之介の車が停めてあって、オレはその助手席に乗った。
車が走り出す。
見るともなく窓の外の移ろう景色を見ていると、善之介が言う。
「なんか食べて帰ろうか。」
オレは全く食欲がなく、むしろ吐き気がするぐらいだったが黙ってた。
車がファミレスの駐車場に入っていく。
「なに食べるー?」
善之介はメニューを開きながら、独り言のように言う。
「…オレ、別にい…」
「すみませーん!」
善之介はオレの意見なんて聞いていないようだった。
ナポリタンとハンバーグを注文。
ほどなくして、料理が運ばれてくると、
「ナポリタン、ともぴょん食べなよ。」
善之介の指示通り、ナポリタンがオレの前に置かれる。
オレの意見を善之介は無視した。
「ナポリタン、食べるでしょ?」
オレは善之介の玩具なのかもしれない。
オレはフォークとスプーンを手に取り、自棄になって、ナポリタンを頬張った。
そうやって、頬張ったナポリタンの味は全くしなかった。
ナポリタンを食べながら、自然の涙が零れてくる。
善之介はオレの横に座って、頬についたケチャップを涙と一緒に舐め取った。
高校生なのだろうか?
若いバイトのウェイトレスが、そんなゲイ丸出しの俺たちを見て、目を丸くする。
もはや、オレはそんなことでは、動じなかった。
好きな女にホモセックス見られることに比べたら、恥ずかしいものもない。
オレたちは飯を食い、善之介の家に戻って、またセックスした。