ついに架純にも彼氏ができたかー…
友だちが幸せなことは喜ばしいことだが、小野さよ子は自分だけ恋人がいないことに内心焦っていた。
今年のクリスマスまでにはあと2ヶ月をきっていて、去年一緒に過ごした友だちはみんなめでたく恋人と過ごすことになりそうだ。
いいなぁ~…
さよ子は心からそう思った。
「さよ子をほっとくなんて世の中の男がどうかしてるって!
てゆーか、さよ子、理想高すぎ!
春野くんに告白されたんでしょー?とりあえず付き合っとけばよかったのに。
春野くん、かわいいじゃん。」
「あー…うん、ちょっと身長が…
でも、春野くんかわいいよね。」
「えー、身長関係あるぅ?」
さよ子が春野をフッたのは、身長のせいもある。
だが、それよりも、ちょっとした復讐心が、さよ子をそうさせたのである。
夏のサークル合宿の合間の出来事だった。
夕暮れどきの海辺で、佐々木善之介と一緒になったとき、さよ子は思いきって告白してみた。
「気持ちはうれしいけど、さよ子ちゃんとは付き合えない。」
それが善之介の答えだった。
「ともぴょんがさよ子ちゃんのこと好きなの気づいてるよね?オレはともぴょんを裏切ることができないな。」
善之介は続けた。
「ともぴょんと付き合ったげてよ。いいヤツだし、本気でさよ子ちゃんに惚れてるみたいだから」
さよ子はなにも言えなかった。
善之介には一目惚れだったけど、友だち思いで、裏切らない正直な人だから、こんなに好きになったのかもしれない。
「…ひどいよ。
フラれたのに、また好きになっちゃったじゃない…」
海辺に残されたさよ子は、独りで泣いた。
春野くんが私のこと好きじゃなかったら、私は善之介くんと付き合えたのかな?
さよ子は思った。
もし、春野くんさえいなければ、善之介くんと付き合っていたのは私かもしれない。
そう思ってた頃、さよ子は知広から告白されたものだから、ちょっと意地悪したくなったのだった。
…あれは、大人げなかったかもしれない
さよ子は思った。
もっと春野くんの告白を真剣に受け止めるべきだったかもしれない。
もし、善之介くんがいなかったら私は春野くんと付き合ってるだろうか?
さよ子は考えてみたが、答えは分からなかった。
次々と彼氏ができていく友だちたちの間で独り取り残される自分に焦りは感じている。
あのとき春野と付き合っておけば、こんな気持ちにはならなかったかもしれない。
自分は高望みしすぎなんだろうか―
春野知広でもよかったんじゃないだろうか。
でも―…
ケータイが鳴る。
LINEが来たみたい。
さよ子は気づいてはいたが、後で確認することにした。