さよ子の部屋は意外にもこざっぱりはしているものの、程よく女性らしい部屋だった。
白を基調にしたインテリアで統一されているからかもしれない。
「インテリアで統一」とはいっても、6畳一間にシングルベッドとローテーブル、テレビがあるぐらい。
ベッド脇には飾られている花に、オレは女性らしさを感じてグッときた。
「ごめんね、ちょっと散らかってて…」
さよ子が足元の雑誌を片付けながら言う。
「…えー、全然散らかっててないよー」
オレは緊張して、部屋をぐるぐる見回すしかなかった。
どこに座っていいのか分からず、遠慮して立っていると、
「…ここ、座っていいよ。」
さよ子がベッドに座って言った。
ベッドに腰掛け、二人でテレビを見ていたが、テレビの内容はまったく頭に入ってこない。
奇妙な沈黙が流れる。
横を見ると、すぐそばでさよ子が顔を見つめて待っているような表情をしている。
オレはは少し戸惑いながら、さよ子に口づけをした。
このまま善之介みたいに、キスをして、押し倒してしまえば…
―善之介みたいに?
さよ子から見てオレは善之介みたいに見えてるんだろうか?
暗い部屋のなか、オレの上で腰を振る善之介を思い出した。
ベッドの軋む音。
ケツから腹のなかに異物を挿入される圧迫感に、たまらずアンアン喘ぎながら、早く終われと思ってた記憶が甦る。
…いやいやいやいや!
オレは善之介とは断じて違う!!!
善之介のは強姦だが、オレとさよ子は付き合っているのだ。
お互いに愛し合ってて、もっとよく分かりあうために恋人としてのコミュニケーションをとるだけだ。
オレはさよ子を愛してる。
―愛してる。
オレと善之介の「愛してる」の違いはなんなのだろうか?
オレはさよ子を汚していいんだろうか?
アンアン喘いでるうちにふわふわと気持ちよくなって
いつの間にか、善之介の腰の動きに合わせて腰を振ってたオレ。
息づかいがシンクロして、果てた…と思ったその瞬間、どろりとした精液でぬるぬるするのが、気持ちよくて、気持ち悪い。
それと同じく、オレは白く濁った体液で、天使のようなさよ子を汚すのだろうか?
そんなことしたら、白くてふわふわして、透明なさよ子が、さよ子でなくなってしまうのではないかと、ふと恐ろしくなった。
てゆーか、「愛してる」って何?
「…ごめん。」
長いキスのあと、オレは、さよ子の目をしっかり見て言った。
「…やっぱ、こういうこと、もっとちゃんと付き合ってからにしよう。
オレ、さよ子を大切にしたい。」
オレたちは、同じベッドで、背中合わせで眠りについた。
据え膳食わぬは男の恥なんだろうか。
思い返してみると、自分がバカな男に思えてくる。
かえって、さよ子を傷つけてしまっただろうか?
さよ子が実際どう思ったか分からない。
でも、オレは、さよ子を大事に守っていこうと思った。