ほどなく、ベッドの方からは、入来昭仁の穏やかな寝息が聞こえてきた。
―いつ男に犯されるか分からない。
身を堅くしていた知広は、身体に入った力を、ようやく抜くことができた。
入来くん、いいヤツだなぁ。
そんないいヤツを疑ったり、嘘しかつけない自分はなんて情けない男なんだろう。
知広は思った。
さよ子に「他に好きな人がいる」と言われたのは本当だけども、エア同棲彼女とのエアケンカを咄嗟にでっち上げてしまった。
…いや、同棲は男としかけていたんだけども。
そんなことよりもオレは、ここにすまわせてもらっているうちに、新しいバイト見つけなきゃ…ぼんやりとやらねばならないことを整理しているうちに、知広は平穏な眠りのなかに落ちていった。
このまま学校は休もうかとも思ったのだが、ゼミだけは出席しないことには留年してしまう可能性が高いため、知広は授業に出席することにした。
善之介に張られていたらどうしよう…とも思ったが、アイツはアイツで医学部授業ビッチリみたいだし。
そんな暇ないだろう。
授業ギリギリに行って、さっと帰ろうと知広は思っていた。
授業終わりに珍しくさよ子がこっちを見てなにか話したそうだったけれども、善之介に見つかるのだけは避けたいので、時間はない。
オレはさっさと教室を後にし、服屋のバイトの面接に向かった。
バイトの面接は上々だったような気がする。
2、3日後に結果を連絡してくれるらしい。
一仕事終え、ケータイをチェックすると、LINEが一件入ってた。
「今から会えない?
この前のこと謝りたくて。」
さよ子からのLINEだった。