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―――オレの愛は報われない。

つい数週間前まで、坂本はほとんど無意識に、ぼんやりと信じていた。

自分はゲイだから、愛しても報われない。
報われないならいっそ愛さない。

―――てか、「愛してる」って何?

その答えは今もよく分からず、答えられそうもない。

誘拐されたり、輪姦されかけたりしていたし、疲れきっていたのだろう。
坂本とのセックスの後、病院のベッドで眠りこんでしまった悠希の、柔らかく羽根のような猫っ毛を撫でながら、坂本はぼんやりと考えた。

―――というか、そもそも、「報われる」とか期待している時点で、それは「愛」じゃないのかもしれない。

報いや見返りを期待するのは自分本位である。
もしも、本当に「愛している」のであれば、そんなものは期待もしないだろう。
人を「愛している」と思ったとき、心とは裏腹に身体が、相手を渇望するのは、オレが神ではなく、人間だからなのだろうなと、「人間らしさ」を痛感する。

あるいは、そもそも「愛」というものは、心も身体も、お互いに満たせあえる関係にのみ存在するものなのかもしれない。
一方的では成立しないものだったのかもしれないと、今になって坂本は気づいた。

―――オレは悠希を愛しているんだろうか?愛せるんだろうか?

悠希には申し訳ないと思うが、今の坂本には、その答えも分かりそうにない。

―――ただ、オレは幸せだなとは思う。

坂本は心の安らぎと解放感を感じていた。
興奮しているわけではないのだが、実際のところ、天にも昇る気持ちというのは、こういう心の在り方を指すのかもしれない。

「愛しているか?」とか「愛せるか?」とか。
難しいことはよく分からない。

悠希を抱いているとただ自分は幸せだと思うし、自分がこの上なく幸せだと思える関係になれる人間を世界中から探し出せたことは、とても希有なことなのではないかと坂本は思っていた。

「…村瀬は、オレにとって天使みたいだねぇ。」

悠希の安寧な寝顔を見下ろしながら、坂本は呟いた。

結局のところ自分本位な「愛」にしかならないかもしれない。
坂本は悠希と一緒にいることに自分の幸せを確信していた。

そして、願わくば、悠希も自分と同じく、一緒にいるだけで幸せであってほしいと思う。
悠希の幸せは自分の幸せでもある。

―――悠希と一緒に幸せになりたい。

それは結局のところ、自分本位な願いかもしれない。

自分の幸せを、自分なりに、自分らしく。
坂本は、悠希とともに、精一杯大事にしようと思った。

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