週末土曜日20時半―――渋谷。

今週末は来なくていいと本郷から言われていたので、坂本はゲイビ男優仲間と飲んでいた。
ゲイからバイセクシャル。
職業も学生からフリーターまで様々だったが、基本的にはみんな一様に金はなかった。
借金のためにほとんど出演を強要されている男もいれば、遊ぶ金がほしいだけの男もいる。

「キング~。男優辞めるってホント~?」

辞める噂が早くも広まっていることに坂本は苦笑した。

「んー…まー。このままだったら辞めざるを得ないかなぁ。」

まさか仲間に酒の席で勃起しないとは言えず、坂本は笑ってはぐらかした。

「いいよなー。キングはパトロンがいて。本郷さんムッチャ稼いでるそうじゃ~ん。男優から愛人に華麗に転職、うらやまー。」

話しづらい話題を振られ、坂本はふと携帯電話を開いた。

「中目黒着いたけど今どこにいるの?」

約一時間前に入っていた悠希からのLINEに気づいて、坂本はさらにイラッとした。
悠希には自分のペースを乱されっぱなしで、もはや関わりたくないと反射的に坂本は思ったし、そもそも坂本は、本郷が勝手に坂本の携帯電話していたLINEのやり取りの認識がなく、悠希のLINEには心当たりがなかった。
「誰かに間違って送ったのだろう」と思い、スルーを決め込んだ、その時だった。

知広から電話が入る。

坂本は一瞬躊躇って、酒席を外して、電話を取った。

「もしもしー?坂本ー?」

知広の声が耳元で聞こえる。
未だに胸がキュンとざわつく自分に、坂本は驚いた。

「ともぴょ~ん。どうしたの?」

できるだけ冷静を保って返事をする。

「…どうしたのじゃなくね!?オレ中目で待ってるんだけど、悠希つながんないしさー。お前今どこいんの???」

待たされ若干キレ気味の知広の言葉が、坂本は飲み込めなかった。

「…どこいんの?って、今渋谷だけど。」

「…はぁ?お前悠希との約束ブッチしたの!?!?!?」

坂本はまったく状況が飲み込めなかった。

「…ちょっと待って!約束って何?意味分かんないんだけど~。」

坂本の間の抜けた応答に知広が黙る。

「…もしもし?ともぴょん?」

電話が繋がってるか、坂本は不安になって、確認した。

「はーい。」

知広が面倒くさそうに答える。

「…てかさ、悠希からなんも聞いてないの?」

「…ん?…うん。」

「今日、お前と悠希と3人で20時から中目黒で話そうって約束してたはずなんだけど。」

「…え!?そんな約束全然聞いてないんだけど。」

坂本は喋りながら、1時間前に入っていた悠希のLINEを思い出した。

―――約束してたのだろうか。

勃起不全のみならず、記憶障害か?
知広と悠希の二人から尋ねられ、坂本は一瞬自分が信じられないほど不安になったが、そんな履歴はLINEにはなかったし、何も悠希からは聞いていないはずだと再認識した。

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