「んーーーーーーー!んーーーーーーー!!!」
―――身体が熱い。
だらりと舌を出し、腰を捩らせ叫び続ける。
悠希にはこの数十分が数時間に感じられた。
「んーーーーーーー!んーーーーーーー!!!」
涙を溢すだけでは耐えきれず、悠希は啜り泣きを始めていた。
「お。本郷さんじゃなーい。」
LINEを観て二人連れの男が連れ立ってやって来た。
「本郷さん、相も変わらず鬼畜だね~。」
男達は悠希を品定めするように上から除き込んだ。
「ま、かわい子ちゃんとヤらしもらえるからいいんだけどさ。」
「よだれ垂らしてエロいね~。まだヤっちゃダメなの?」
男達が口々に話し始める。
「スゲー、オレ動画見てる時点で勃起したまま来たわ。」
嘲るように笑う男達を本郷が制止する。
「まぁ待てよ。もう少しギャラリーが集まってから…」
「テメェ!なんだこの野郎!?!?!?」
本郷が話し始めたとき、入り口付近で人が騒ぐ声がした。
ドォッと人が倒れる音がする。
ガチャンガチャンと扉が開けられていく音が近づいてくる。
バタバタと人が騒々しく走る。
「…村瀬っ!!!!!」
扉を開けて駆け込んできたのは、坂本だった。
「村瀬っ!!!!!!!!!!」
坂本は長髪を振り乱し、息を切らせていた。
拘束された悠希の前に立っている、本郷の姿が目に入る。
「………本郷………さん?」
坂本は目を丸くして立ち尽くした。
―――悠希を捕らえたのは本郷さん?
坂本のなかですべてが繋がる。
その瞬間。
その場にいた二人連れの男のうちのひとりが坂本に殴りかかる。
「テメェ!オレらの楽しみの邪魔してんじゃねぇよ!!!!!」
坂本は殴られた頬を拭った。
口のなかが切れる。
「うるっせぇよ!この下衆が!!!!!」
坂本がフックで殴り返した。
「もっとマシな楽しみ見つけてろ!!!!!!!」
倒れ込んだ男は、踏みつけてくる坂本を寸でのところで転がってかわす。
バランスをヨロヨロと崩しかけた坂本を、もうひとりの男が後ろから羽交い締めした。
「離せ!!!このボケ!!!!!」
坂本が後ろに肘鉄を食らわせようともがく。
男が必死に坂本を押させつけようしているうちに、転がっていた男が起き上がり、坂本の顔を右手の拳で数発殴る。
坂本の鼻からは鼻血が流れ、目の前には火花が飛んだ。
ほとんど見えない状態で、坂本は前蹴りを繰り出し、殴ってくる男を牽制しながら、羽交い締めから逃れようと無茶苦茶にもがいた。
「しつけーんだよ!」
殴っていた男が坂本の襟首を掴んで床に叩きつけ、馬乗りになり、さらに何発も上から殴り付けた。
坂本がゲホゲホと咳き込む。
「おいおい!沖田~。殺すなよ~。」
羽交い締めにしていた男が、殴り続ける男―――沖田を茶化した。
沖田は坂本の襟首を掴み、二、三度頭を床に叩きつけた。
「沖田ー。お手柔らかに頼むぜ。」
本郷も諌めた。
「そいつはオレの大事な愛人だからさ。」
本郷の言葉を聞き、沖田はようやく手を止めた。
坂本はぐったりとして動かない。
悠希がうんうんと動物のように喚く声だけが虚しく響いていた。