ザーッと強めの雨音がしている。
夜が明けたのだろう。
頭上のカーテンレールを見ると青白く薄明かりが漏れていた。
「…うっ…………ん。」
坂本は布団に顔を埋めた。
明らかな二日酔いで、頭がガンガンと痛み、胸焼けがする。
今何時なのだろうか、坂本は思い、頭上にあるはずの時計を手探りで探した。
頭を布団に埋めたまま、手だけを頭上にあげ左右に動かし、時計を探すが見つからない。
坂本は俯せに寝返りを打ち、上半身を起こして時計を探したところで、気がついた。
ここは自分の部屋とは違う。
―――ここどこ???
坂本は焦った。
―――しかも裸じゃん!!!!!
ズキンズキンと痛む頭をフル回転させ、記憶を呼び覚まそうとする。
胃の内容物がグルグルと胸まで上がってきてムカつく。
「…ん。」
背中側に気配を感じて坂本が振り返る。
そこにはパン一の悠希が横たわっていた。
「……んん、キング。」
悠希が目を擦ってこちらを見た。
「おはよ。」
坂本は驚きのあまり二日酔いも覚めるのを感じた。
背中を冷たい汗が流れていく。
「…あぁ………うん……………。」
曖昧に返事するのが坂本には精一杯だった。
最悪だ。
…最悪だ!!!
全っ然覚えてない!!!!!
坂本は内心自分を責めていた。
パンツをはいたあと、ベッドの傍に座り込んで、黙って紙パックのトマトジュースを啜る。
悠希もパン一のまま黙って台所に立ち朝食の用意をしているようだった。
味噌汁のいい匂いがする。
…ヤってしまったんだろうか。
坂本は一生懸命頭を絞ったが、悠希との記憶は居酒屋でテキーラを頼んだところで途絶えていた。
トースターからチンッと乾いた音がした。
「焼おにぎりぐらいしかないけど、いいかな?」
悠希が焼おにぎりを盛った皿と、味噌汁の鍋を持ってやって来た。
二人はソファーに座り、朝食を黙々ととった。
気まずく重苦しい空気を坂本は感じてはいたが、悠希に何を話しかけていいのか分からず、黙って食べるしかできなかった。
「…おいしかったよ、ごちそうさま。」
食べ終わったあと、坂本は絞り出すように一言悠希に声を掛けた。
それだけはしなくてはならないと思ったのだった。
「そう?よかった。」
悠希は嬉しそうに微笑んだ。
「最寄り駅まで送ってくよ。」
「…えぁ!?」
正直なところ坂本は一刻も早く悠希から離れたくて、思いがけない申し出に声にならない声を出した。
「…いや………いっかなぁ。多分分かる分かる!Google先生に聞きゃ分かるし!!!」
「僕も学校行くからさ。ついでに、ね。」
二人は雨のなか、相合い傘で部屋を出た。