Weekend, the End

週末、代官山。
雲ひとつない青空の下、緑に囲まれたオープンカフェは気持ちがよかった。
隣に座っている若い夫婦が連れてるトイプードルが無邪気に舌を出してこちらを見ている。

悠希はニコニコして、トイプードルの方を見ながら、アイスティーを飲んでいた。
氷が溶けてカチンと崩れた。

サングラスをした坂本は足を組み、斜に構えて道路に向かって座っていた。
遠くの席のOLが軽くこちらを指差し、「あの人カッコいいよねー」などと、キャーキャー騒いでいるのが聞こえる。
坂本はそんなことは意に介さず、アイスコーヒーを飲んでいた。

「キング、本当にモテるね!」

悠希がにこやかに話しかけた。

「当たり前じゃ~ん?オレ、キングだし。」

坂本が平然と答える。

「い、いらっしゃいませ~…」

ウェトレスが緊張して上擦ったような声で挨拶するのにつられて入り口の方を見ると、そこには佐々木善之介が立っていた。
ウェトレスがうっとりと善之介を見つめているのが見える。

「佐々木くーん!」

悠希が善之介に手を振る。
善之介の向こうに春野知広が立っているのも見えた。

善之介が悠希の方に手をあげる。
知広も悠希に、そして、坂本に気づいて一瞬顔を強ばらせたのを、坂本は見逃さなかった。
知広が身を固くして、善之介の上着を引いた。

「ともぴょん?どうした?」

「…ううん。………なんでもない。」

善之介が優しく問うのに、知広は無理矢理な作り笑いで答えた。
善之介は唐突に挙動不審になった知広を怪訝な顔で見つめる。

「二人はデートなの?」

そんな空気を察してか、悠希が二人に尋ねた。

「…う、うん。」

知広がぎこちなく答える。

「デートっていうか、な!買い物だよな!」

善之介のほうに知広は笑顔を向けて同意を求めた。

「…あ、うん。」

善之介がイマイチ納得いかなそうな顔をしながら、悠希のほうに向き直った。

「ともぴょんの服買いにね。あとラーメン食べに来たんだけどさ。」

チラリと坂本の方を見る。
坂本と善之介の目が合った。

「ともぴょん、いつ見ても泣いてんじゃねーか!お前に振り回されてんだろ!!!」

「距離とか置いてる間に、オレが無理矢理奪っちまうぞ!!!」

知広と距離を置いていた時、坂本に怒鳴られたことを善之介は思い出していた。
警戒してか、善之介が、知広の肩を少し自分のほうに引き寄せながら尋ねる。

「悠希とお前、付き合ってんの?」

「アンタに関係なくない?」

善之介の質問に食い気味に坂本が答えた。

「…あ?」

「…ちょっ!善之介!!!」

座っている坂本に掴みかかろうとする善之介を、知広が止めた。

「オレら、あっち行こ?…ね?」

知広は店内を指差し、善之介の押し始めた。
立ち去ろうとする知広を追おうとして、立ち上がろうとする坂本を、知広が睨む。
坂本は蛇に睨まれた蛙のようにその場から動けなかった。

「外の方がいいって、ともぴょん言ってたじゃん!」

「だって、二人の邪魔すんの悪くない?」

二人の会話も、もはや坂本の耳には入らなかった。

実際のところ、知広が軽蔑していたかどうかは分からない。
ただ、坂本には、知広が自分を軽蔑するような眼で睨んだと感じられた。
レイプしかけた自分を恐れ、蔑み、怒み、憎んでいるのだろうと坂本は思った。
知広を殴り付けたときの拳の痛みとは比べ物にならないほど心が痛む。

―――ともぴょんに申し訳ない。

坂本はサングラスを外し、顔を手で覆って大きく息をついた。

そんな坂本を、悠希は黙って見守ることしかできなかった。

 

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